COLUMN 04
業務にAIを使うとき、会社の情報はどう扱えばいいか
「便利そうだけど、お客さまの情報や会社の数字を入れて大丈夫なのか」。AIの相談で、いちばん多く聞く心配です。
その心配は正しいものです。ただ、「怖いから禁止」にすると、社員が個人のスマホでこっそり使い始め、かえって見えない所で情報が出ていきます。禁止するより、決まりを決めて使う。そのために知っておきたいことをまとめました。
PLANS
同じAIでも、「どの形で使うか」で扱いが変わる
- 使い方
- 入力した内容の扱い(一般的な傾向)
- 個人向けの無料・有料のプラン
- AIの学習に使われる設定が初めから入っている、または利用者が選ぶ形のものがある
- 法人向けのプラン
- 初めから学習に使わない、としているものが多い
- 業務の仕組みに組み込む形(接続キーで呼び出す形)
- 初めから学習に使わない、としているものが多い。ただし、不正な利用の監視などのため、一定の期間保存されることがある
どれも「多い」「ことがある」としか書けないのは、サービスごと・時期ごとに変わるからです。使う前に、利用規約と設定を確かめるのが基本です。
GUIDANCE
個人情報保護委員会が、事業者に求めていること
個人情報保護委員会は2023年6月、生成AIのサービスを使う事業者に向けて、次のような注意を出しています。
- 01
利用目的の範囲内か
個人情報を入れるときは、その情報を集めたときの利用目的の範囲内かを、十分に確かめること。
- 02
学習に使わないことを確かめる
本人の同意なく個人データを入れ、それが応答の出力以外の目的で扱われると、個人情報保護法の規定に違反する可能性がある。そのため、サービスを提供する事業者が、入れた個人データを機械学習に使わないこと等を十分に確かめること。
出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日)
つまり、お客さまの名前や連絡先を入れるなら、少なくとも「学習に使わない」形のサービスを選び、それを確かめておく必要があります。
WHAT TO ENTER
入れない・注意して入れる・入れてよい。3つに分けて、線を引く
-
入れない
どのサービスにも入れない
- パスワード・接続キー
- マイナンバー
- クレジットカードの番号
- 病歴などの、特に配慮が必要な個人情報
- 取引先との契約で、外に出せないと決めた情報
- 取引先ごとの原価・仕入れ値・利益率など、外に出ると取引に響く数字
-
注意して入れる
会社として認めたサービス(学習に使わない・機密保持の定めがある)で、必要な範囲だけ
- お客さまの名前・連絡先
- 取引先の名前
- 集計や下書きに必要な範囲の社内の数字(受注の数量・単価など)
-
入れてよい
普通に使ってよい
- すでに公開している情報(ホームページの文など)
- 一般的な文章の下書き
- 人や会社がわからない形に直したデータ
どこまで入れるかは、社員一人ひとりではなく、会社として決めます。迷ったら、「この内容が、知らない人に見られたら困るか」で考えます。
売上や原価などの「会社の数字」について
学習に使わず、機密保持の定めがあるサービスなら、入れただけで営業秘密として守られなくなるわけではない、という見方があります。一方で、法律上の問題がなくても、重要な数字まで入れてよいかは別の問題です。漏れると取引に響く数字は入れず、集計や下書きに必要な範囲にとどめるのがおすすめです。
ここでの「入れない」は、AIのチャットに貼り付けたり、相談したりしない、という意味です。取引先ごとの仕入れ値を扱う仕組み(たとえば原価の見張り番)を作るときは、計算は会社専用の仕組みの中で行い、AIには書類の文字の読み取りだけを、学習に使わない・機密保持の定めがある契約のサービスで任せます。どこまで任せるかは、会社として決めて、契約で確かめます。
RULES
社内の決まりは、A4一枚から
最初から立派な規程は要りません。まずは、次の5つを紙1枚に書いて、社内で共有するところから始めます。
業務でAIを使うときの決まり(例)
- 使ってよいサービス 会社で契約した、学習に使わない設定のもの。個人のアカウントでは使わない。
- 入れてはいけない情報 上の「入れない」の一覧。
- 出てきた答えは、人が確かめてから使う 数字・名前・日付は特に。
- 困ったとき・間違えたときの連絡先 「入れてはいけないものを入れてしまった」ときに、すぐ相談できる人。
- 見直す時期 サービスの設定や決まりは変わるので、年に一度は見直す。
年 月 日 制定/担当:
国の「AI事業者ガイドライン」(総務省・経済産業省)にも、AIを使う側の考え方がまとめられています。最新は第1.2版(2026年3月)です。全部を読む必要はありませんが、決まりを作るときの参考になります。
CHECK THE OUTPUT
AIの答えは、間違えることがある
AIの答えは、もっともらしい文章でも、確率で作られています。名前や数字が間違って出てくることもある、と国の注意喚起にも書かれています。だから、仕事で使うときは、人が確かめてから外に出す。これは、情報を守ることと同じくらい大事な決まりです。
OUR PRACTICE
New-Elements が仕組みを作るときにしていること
- 1
学習に使わない設定のサービスを使う
そのことを契約書に書きます。
- 2
お客さまごとに、AIの利用の枠を分ける
使いすぎないよう、上限も決めます。
- 3
どの情報を、どこに保存するかを先に説明する
作る前にご説明します。
- 4
最後は人が確認する
AIの答えは、確認してから一覧に入る作りにします。
- 5
契約の終わりに、切り替えられるようにする
お客さまご自身の契約に切り替えられる作りにします。
出典・参考
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日)
- 経済産業省「営業秘密管理指針」(2025年3月31日 最終改訂)
- 田中浩之「生成AIへの個人情報・営業秘密・機密情報の入力」Business & Law(2026年)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」(第1.2版、2026年3月)
※ この記事は一般的な考え方をまとめたもので、法律の助言ではありません。個別の判断は、専門家にご相談ください。